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この文章は湖水地方の旅行期の続きです。
よろしければ6/14からお読みください。


[1. Departure]

「どのくらい自転車に乗っているの?」
「20年くらい」
前日の夕食でモーリーンは僕にそう尋ねた。
僕が自転車を買ったと言ったとき彼女はとても驚いていて、どうしてそんなもの買ったの?くらいに言っていた。
彼女はひどく心配していて、ヘルメットをかぶれだとか、ちゃんと走れるの?だとか、車道を走れるの?だとか・・・
そりゃあもう次から次へと問題点を口にした。
そのときの僕にはなぜ彼女がそこまで心配するのか理解できなかった。
けれども、ここにきてようやく謎が解ける。
英国では(もしかしたら他の欧州国でも)自転車を運転する人はそんなに多くない。
モーリーンもトニーも乗れないし、彼らの孫は12歳でようやく練習し始めたくらいだったからだ。
乗物というよりはスポーツに近いのかもしれない。
だから、日本ではほとんどの人が子供のころから自転車に乗れる、だからそんなに心配しなくていいよ、
とモーリーンに言ってやった。
それを聞いて彼女はようやく安心したようだった。


2c9f8a8a.jpeg10日の朝はとても早くに出発した。
前日に荷物をまとめた荷物は本当に少ない。
替えの下着と靴下にシャツ、ハンドタオル一枚とブラシ、BERKELEY、メモ帳、あとはカメラと貴重品。
非常食にはクッキー、そして大量の水。本当にそれだけだ。
なにせ自転車で旅をするわけだから荷物は軽いほうがいい。
何度も何度も電車の時刻を確認して7時半に玄関を出る。
家の脇からヴァルハラを出してくるとトニーが道でのんびりと煙草を吸っていた。
いってきますと挨拶をしてMarmora Roadを後にする。


ロンドン市街は既に迷うことはなかった。
標識の見方も方向感覚も十分に学んでいた。
時間には余裕があったので朝の通勤ラッシュを尻目にのんびりとEustonへ向かう。
9時少し前には駅に到着し、最近お気に入りのBERKELEYを一本吸う。
まだ煙草は止めてはいないけれど、それでもずいぶん本数は減った。
多い日でも日に4本、吸わない日だって少なくない。
吸わなくてもロンドンの空気は悪いから、既に肺は十分汚れていることだろう。

006.JPG発車30分前くらいには構内の大きなDeparture Boardの前に立つ。
僕の乗る電車はなかなか出発準備が整わないようで、結局出発15分前くらいにようやく乗ることができた。
ヴァルハラを転がしてホームへ急ぐ。
South West線は自転車用Coachがあったので僕はそれを期待していたんだが…
残念ながらVirgin線には専用スペースがないらしく、先頭車両の貨物置場に案内してもらった。
運転手さんと他愛のない会話をしてから、予約席に戻る。
残念なことに予約席は進行方向と反対向きの席だった。



007.JPGそうそう。
この国は後ろ向きに進むのを全く気にしない。
タクシーですら向かい合って乗る席が普通。
確かに馬車の時代から、向かい合う席が普通だったのかもしれない。
僕はあまり得意じゃないのでちょっと嫌だったんだけれど。
本当は乗り物が得意ではないので、反対向きだと酔ってしまうのです。
なんとか酔わないように窓の外をじっと眺めて、各席に用意されているラジオの音楽に耳を傾ける。
見慣れたロンドンの朝の情景はみるみるうちに遠く離れていった。


 ***


英国は本当に緑が豊かだ。
都市部を離れてしまうと、あっというまに牧歌的な景色が広がる。
日本では既に町と町は隣接し、街並みが絶えるということは殆どない。
しかしこの国では町と町の間には必ず草原か畑、牧場が広がっている。
見慣れない僕にはそんな単調な景色ですら貴重だ。
駅の近くにしか町は存在しない。
そんな景色をぼんやり眺めながら、僕は少しだけ浅い眠りについた。


c870a5c5.jpegどこかの町に着くアナウンスで飛び起きて、あわてて隣の席の老夫婦に尋ねる。
まだWiganだった。Lancasterまであと数駅だ。
僕はLancasterでLake District線に6分で乗り換えなければならない。
それがすごく心配だった。
Lancasterがどんなに広い駅か知らないし、何番線からLake District線が出ているのかも知らなかったからだ。
それにヴァルハラも乗せ換えなければならない。
そわそわしながら到着するのをひたすら待った。

12:35、定刻より少し遅れて列車はLancasterに到着した。
大急ぎでヴァルハラを貨物車両から出す。
なにより12:39には次の列車が来てしまうからだ!
それまでに乗り場を見つけてホームまで行かなければならない。
階段があったらどうしよう…とか、間に合わなかったらどうなるんだろうとか・・・
色々な不安が頭をよぎったけれども、もう何も考えずに行動するしかなかった。
あと…4分…
とりあえずホームに降り立ち、真っ先に最寄りのDeparture Boardを確認する。
自分の持っているチケットと照合して…
…なんだ…
同じホームか…
念のために近くにいた駅員さんに確認したところ、ちゃんとあっていた。よかった!
これで急ぐ必要がなくなったわけで。
安心した僕は、ついでに自転車用車両があるか聞いてみた。
列車の先頭か後ろなら広いスペースがあるそうだ。
でもどっちだったか定かじゃないと言っていたので、僕はさっきと同じ先頭車両で列車を待ってみた。


015.JPGLake District線は5両編成の短い列車だった。
英国の列車はみな新しいのか、すごく機能的で美しい。
新幹線のようなタイプがほとんどだ。
この列車も紫と白が基調になっていて、僕はとても気に入った。

先頭車両から列車に乗るとたしかに車いす用車両らしく、広いスペースがあった。
適当な場所に立てかけて近くの座席に座る。
この車両には大きな荷物を持ったおばあさんが一人だけだった。
これから湖水地方の友達とCaravanするらしい。
ちなみに英国ではキャンピングカーみたいな車で旅行することをキャラバンという。
僕がWindermereでサイクリングするんですと言ったら、パンクしたらどうするの?と聞かれた。
みんなまずはそれを心配するんだな。
ちなみに僕は知ってのとおり、自分でパンク修理する術がない。
だから「誰かに助けてもらいます」といったら「そううまくいけばいいけど」と言っていた。
加えて、いくつもの丘があるからがんばるんだよ、とも言われた。
そんなに高低差があるのだろうか…
このときの僕には想像上の計算でしかなかった。
どんなに坂がきついかは、数時間後に思い知ることになる。

718e5eda.jpegWindermereはこの路線の終点だ。
乗り換えの心配がなくなった僕は、再び窓の外の景色に見とれる。
どこまでも広がる草原にはのんびりと羊たちが草を食み、ぽつりぽつりと建つ家々はこの地方独特の様式だ。
ロンドンの家々はそのほとんどが煉瓦でできているけれど、この地方では平たい石を積み上げて作る。
煉瓦よりもさらに長持ちするのだろうか…1800年代の建物も町中で数多く見かける。
僕はこのDark Grayの家々がとても気に入った。
それに牧草地を区切る石積みの壁には何とも言えない風情があった。
どこを眺めてもファンタジーの世界に飛び込んだようで、僕は本当にこんな現実離れした場所に来てしまったのが信じられなかった。


026.JPG数個の小さな駅に停車したあと、列車はWindermereに到着した。
時刻は13:20頃。
とりあえず…何をするべきか。
ほとんどの乗客は小さなバスターミナルに停車していたバスに乗ってどこかに消えていった。
残された僕は…とりあえず駅前(といっても日本のような駅前を想像してはいけない)のベンチに腰掛け、
朝作ってきたサンドウィッチを頬張りながら途方に暮れたのだった。

03d957e6.jpeg


















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I'm now a uni student in London. My hobbies are cycling, baking cakes and having tea and playing the violin :-)
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